3月末に利上げに消極的なハト派発言をしたイエレンFRB議長。6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で再度の利上げに踏み切るのか (c)朝日新聞社
3月末に利上げに消極的なハト派発言をしたイエレンFRB議長。6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で再度の利上げに踏み切るのか (c)朝日新聞社

 米政府の「為替監視リスト」に入った日本。米国が再度利上げを行ったとしても、日銀は動けず円高圧力は避けられそうにないという。

 円を取り巻く環境は劇的に変化している。年始に1ドル=120円台だったドル/円はたった4カ月で105円台半ばまで上昇した。

「昨年末には『2016年中に112円を試す』と予想していたが、1カ月余りでその水準を突破。予想を来年までに95円を試す方向に修正しました」

 早くから円高を予想していた三菱東京UFJ銀行のチーフアナリスト・内田稔氏はこう嘆息する。そもそも、昨年末の大方の16年相場予想は「円安」だった。利上げを進める米国に対して、緩和を進める日本。金利差の拡大からドル高円安が進むというシナリオだ。それに対して、内田氏ら円高派が注目したのは日本の経常収支。貿易などで発生した収益と支出の差額だ。黒字が拡大すれば、企業・個人は外国で稼いだお金を円に替えるため、円買い圧力は強まる。

 その日本の経常収支は14年から回復。15年には東日本大震災前と並ぶ16.6兆円の黒字に拡大した。震災の起きた11年前半のドル/円は80円台なので、円高に振れてもおかしくない。これが円高派の理屈だった。だが、3月にはイエレンFRB議長の追加利上げに消極的なハト派発言をきっかけに円が想定以上に上昇。4月には大方の予想を裏切り、日銀が追加緩和を見送ったため、円高は加速した。

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