米国の利益確保を強調し、大統領予備選で支持を集めてきたドナルド・トランプ氏 (c)朝日新聞社
米国の利益確保を強調し、大統領予備選で支持を集めてきたドナルド・トランプ氏 (c)朝日新聞社

 共和党の指名獲得が確実なドナルド・トランプ氏。在日米軍駐留経費の全額負担を求める大統領が誕生すれば、日本の安全保障政策はどうなるのか。

「米国は世界の軍隊や警察官をする余裕はない」。トランプ氏は5月4日のCNNインタビューで、日韓に核保有を容認し、米軍駐留経費の全額負担を求める理由をこう述べた。

 突飛な印象を受けるが、「孤立主義への回帰」はトランプ氏のオリジナルではない。沖縄国際大学の佐藤学教授は「米国の伝統的な外交政策です」と説く。欧州との相互不干渉は第2次世界大戦前までの外交政策の基軸であり、冷戦崩壊後もイラクやアフガニスタンでの戦争を経て財政難に陥った米国には、孤立主義的な論調が議会内や知識人の間で目立つようになった。トランプ氏はこうした空気を読み、格差社会の「負け組」となった貧しい白人男性の不満を主に吸収する形で支持を広げてきた。

 このため、大統領選の行方にかかわらず、米国は対中、対ロにかかる軍事的コストを同盟国に負わせる方向に進むのは避けられない、と佐藤教授はみる。

「日本を『特別な』同盟国とは見ない考えが米国に広がっている現実を直視し、日本政府はアジアにおけるカウンターバランスとして米軍のプレゼンスがどれほど必要なのかを冷静に見極め、米国と戦略交渉に当たらなければいけない時代に入った」

「日米安保の値段」が問われる事態に直面したとき、日本はどう対応すべきなのか。

「米国は日本を手放せない事情があることをまず押さえなければいけない」と話すのは元内閣官房副長官補の柳澤協二氏だ。

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