ところがこのBT社、経営者のタン・トンハン氏が、国際陸上連盟前会長で20年大会招致レース時はIOC古参委員として影響力のあったラミン・ディアク氏の息子パパマッサタ氏と関係が深いとされる。ロシア陸上界のドーピング隠蔽(いんぺい)疑惑を調べた世界反ドーピング機関の独立委員会報告書にも名前があった、いわくつきの会社なのだ。

 竹田会長の説明では、BT社との契約は、招致決定直前の13年8月にモスクワで予定されていた陸上の世界選手権とIOC理事会を前に、陸上関係者との人脈が脆弱(ぜいじゃく)だと危機感を抱いたことがきっかけだ。2億3千万円を招致決定前と決定後の2回に分けて支払っているのは、BT社の要求する額を一度では払い切れなかったから。財政が厳しくとも、背に腹は代えられなかった事情が推測される。

 遠藤利明五輪担当相は5月17日の閣議後の記者会見で、こうしたJOCの説明について「タイミングを見て一番効果のある選択をしたという発言だから、評価をしなきゃならないと思っている」と述べた。

 招致は「カネの力」で勝ち取ったものだったのか。JOCは支払いの違法性を調査するため、弁護士をトップとする調査チームの設置を決めた。メンバーはJOCや東京都職員など、主に身内で構成する見通しだ。(朝日新聞スポーツ部・阿久津篤史)

AERA  2016年5月30日号より抜粋