都内の小学校の支援学級に通っていた男児は、小4になり支援学級の担任の先生から、「特別支援学校へ行ってください」と強く勧められた。支援学級を置く学校が少ない地域で、定員がすぐに超過する状況が続いているのだ。結局、5年生から支援学校に転校した。男児の母親は本音を語る。

「最近LDやADHD傾向の子どもたちが通常学級に増えてきたうえ、そうした子を先生方が見きれなくなったように感じます。ちょっとした対応で通常学級にいられそうな子どもが支援学級にまわされて、もともと支援学級にいた子たちが支援学校へ。そんな押し出し式の流れにしないでほしい」

 通常学級か支援学級か。どの学校が柔軟に対応してくれそうか。就学前の情報収集や手続きに奔走する親子にとり、小学校入学の壁は厚い。就学を控え選択肢を広げるため、「持ち家を売って別の地域へ引っ越した」という人もいる。自治体ごとに発達障害のある子への対応には温度差もあるのだ。

 例えば、「就学時猶予」の適用。同じ年に生まれた子どもより成長や発達が遅れる子どもたちのために、小学校に通う年齢になっても、発達の程度によって学校に通わないことを認める制度なのだが、かつて対象となっていたのは、身体・知的障害の子らが中心だった。

●嗅覚過敏で給食配慮

『自閉症・発達障害を疑われたとき・疑ったとき』などの著書がある小児科医の平岩幹男さんによれば、就学時猶予に多くの自治体は消極的で、一切認めないところもあるという。

「1年遅らせることによりお子さんが安心して学校へ通えそうならば、行政に認められないと押し切られそうになっても、あきらめずにアピールしてください。医師に意見書を書いてもらうなど、専門家の力を借りるのも一つの手立て」(平岩さん)

 発達障害で言葉や生活動作に心配があった長男(7)を療育により少しずつ伸ばしてきた神奈川県の母親は、「就学時猶予」の制度を使って今春、1年遅れで長男を小学校に入学させた。だが、「認められるまでに相当のエネルギーを消耗しました」。手続きのため教育委員会や相談センターなど複数の窓口をまわり、「猶予は認められない」と電話が来ても、再審査を申し出て、認められた。

 長男は嗅覚が過敏で、海産物と牛乳を一切受け付けない。食べたら吐いてしまう。給食の対応のため、母親は学校の先生に医師の診断書を見せ、アレルギーとは違い、また単なる好き嫌いでもないことを説明した。

次のページ