安倍政権は現憲法を「押しつけ」とみなし、改憲をめざす/2015年11月、民間団体主催の改憲イベント (c)朝日新聞社
安倍政権は現憲法を「押しつけ」とみなし、改憲をめざす/2015年11月、民間団体主催の改憲イベント (c)朝日新聞社

「改憲」に向けて動き出している安倍政権。しかし報道はよく耳にする一方、いまいち分からない部分も多いのでは。憲法学者の小林節さんに、改憲にまつわる疑問をぶつけてみた。

■「解釈改憲」と「改憲」は、どう違うのですか。

「解釈」というのは、あくまでも憲法が許す範囲内で、政府の公式見解の選択を変えることです。一方、「改憲」は文字通り、解釈の限界を超えて憲法を変えること。「解釈改憲」という概念自体が矛盾しているし、言葉としてそもそもおかしいわけです。

 憲法は法律学の一分野です。言葉と論理で成り立つ、客観性のあるものです。あらゆる事象に対し、概念と論理で結論を求めるから安心感がある。安倍政権のように時の国家権力によってどう運用されるかわからないいまほど、不安なことはありません。

 憲法9条2項には「陸海空軍は、保持しない。国の交戦権は認めない」とあります。この条項があったから、70年の長きにわたり日本は世界中の戦争から超然としていられた。NGOや記者も、どこへ行っても襲われずにすんだわけです。

 安倍首相が官房副長官時代、福岡から羽田に向かう飛行機の中で、たまたま隣り合わせたことがあります。当時、私は自民党のブレーンでしたから、現行憲法のままで集団的自衛権を行使できるのか否かを資料を見ながら考えていた。そこに「小林先生」と声をかけてきたのが安倍首相でした。資料を見ながら40分間、「やっぱり無理。海外派兵したかったら、憲法改正しかない」と直接ご説明しました。

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