提携の基本合意を発表した後、三菱自動車の益子修会長(右)と握手する日産自動車のカルロス・ゴーン社長。満面の笑みを浮かべた表情は心中の表れか/5月12日、横浜市 (c)朝日新聞社
提携の基本合意を発表した後、三菱自動車の益子修会長(右)と握手する日産自動車のカルロス・ゴーン社長。満面の笑みを浮かべた表情は心中の表れか/5月12日、横浜市 (c)朝日新聞社

 まさに「急転直下」の救済劇だった。燃費データ不正問題で窮地に陥った三菱自動車が、日産自動車の傘下で再建を図る道を選んだ。何があったのか。

 壇上のカルロス・ゴーン日産自動車社長の喜色満面ぶりと、横に立つ三菱自動車の益子修会長のさえない表情が対照的だった。5月12日、日産の本社がある横浜市に三菱自側が出向いて共同記者会見が開かれた。

「筆頭株主として、三菱自動車のブランドと歴史を尊重し、大きな成長の可能性の実現をサポートしていきます」

 日産が2373億円を出資、三菱自株の34%を持つ筆頭株主になる。日産株の43.4%を持つのが仏ルノー。その日産が三菱自株の3分の1を握る。つまり三菱自はルノーの「孫」会社になる。ゴーン氏はルノーの最高経営責任者(CEO)も兼務する。

「今回の三菱自の燃費データ不正疑惑が浮上した時、ゴーン社長は『真相を見極めないと分からない』と慎重な口ぶりでした。被害者のようなコメントをするほかの日産の役員とトーンが違うのでオヤッと思ったのですが、こういう展開を待っていたのでしょう」

 自動車ジャーナリストの塚本潔さんは、提携劇の裏にゴーン氏の策略がにおう、と感じている。

 不正が表面化したのは4月20日。三菱自がデータ不正を公表した。ことの始まりは昨年11月、日産が「このデータはおかしい」と三菱自に指摘したことだった。5カ月前から分かっていたことを、3月期決算発表を前に突如公表、「第1発見者」がわずか3週間後に事態処理に乗り出した、という展開だ。

 日産は2011年6月から三菱自と提携関係にある。軽自動車を共同開発する会社を折半でつくり、同じ車を三菱自はeKワゴン、日産はデイズとして販売する。基本設計や製造は三菱自が担うこの車種でデータ偽装が明らかになった。

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