LGBT支援法律家ネットワークのメンバーで日野市民法律事務所の加藤慶二弁護士は、LGBTの当事者たちは、相続が認められず、所得税などの配偶者控除が受けられないなど、差別的扱いを受けており、いまだ同性カップルの存在が可視化されているとは言いがたいと指摘する。

「マイノリティーであるがゆえに、社会のインフラからこぼれ落ちる人たちが大勢いる。家族のあり方はさまざまで、国家が生き方を示したり、家族のかたちについて強制したりするべきではないと思います」

 東京都健康長寿医療センター研究所研究員の平山亮さんも新しい家族の形態が増えている現状を踏まえてこう話す。

「もし時代に合わせて憲法を改正するというなら、多様な家族を認める憲法にすべきです」

 自民党の憲法改正推進本部で本部長代行を務める船田元・衆院議員に、家族の規定の新設について尋ねてみると、「改正草案は自民党が野党のときにつくったもので、『とにかく政権を奪還しなければ』という自民党内の熱が反映されすぎて、党内でも右寄りという印象で、言いすぎてしまった部分が何カ所かある。その一つが『家族』の規定。私たちはこの草案をそのまま押し付けるつもりはなく、これを材料にして、野党ともよく話し合っていきたい」

「改憲」の足音はたしかに近づいてきている。私たち一人ひとりが、その内容について無関心ではいられない。(アエラ編集部)

AERA  2016年5月16日号より抜粋