「ダラダラやりたい人もいるから、委員同士では埒が明かない。変革するには、もうトップダウンしかありません」

 前例を変えるときには、企業以上に気配りが必要だ。実は「改革」や「効率化」はPTAではNGワード。活動量の多さを誇る文化や、前任者の実績は、いくら非効率だと思っても否定してはならない。営利目的ではなく、あくまで協力関係で成り立っている組織。会長挨拶や会報誌のコラムでは「上から目線」にならないような配慮まで求められるという。

 義務教育学校の品川区立日野学園で昨年度まで4年間、PTA会長を務めた鴇田宣一(ときたのりかず)さん(51)は在任中、700人を超える保護者に話を聞き、PTAに何が求められているのかを探った。働く親も専業主婦も参加しやすくするには、多様なニーズを聞き、小さな改善を続けることで当事者意識を持ってもらうことが大事。区長や教育長と撮った写真をあえて積極的にSNSにアップして活動をアピールしたりもした。大変だが、自己裁量の活動ができるのは会長ならでは。

「日時の調整は会長に選択権が委ねられるので、会長はマイタイムで動け、むしろ仕事との両立もしやすい」

 PTA会長が「地元の名士」の代名詞だったのも今は昔、不思議なルールや前例の縛りがある組織での、新しいリーダー像が求められている。(アエラ編集部)

AERA 2016年5月2日-9日合併号より抜粋