「このような活動の必要性を考えるようになったのは11年の震災後のことでした。映画館のデジタル化問題が顕在化した年でもあり、スクリーン数だけは増えているのにマイナーな映画を上映する映画館はどんどん消えていく。そこで、自分の好きな映画を自分で上映できるようになれば、他の人もやるだろうと思い、先例を作るつもりで映画祭を実現させました」(大寺さん)

 そして16年。IndieTokyoからビッグニュースが飛び込んできた。1月29日に亡くなった巨匠ジャック・リヴェット監督の追悼上映プロジェクトを、1年かけて行っていくという大胆な試みだ。

 特筆すべきは、伝説の映画「アウト・ワン」上映の可能性があること。上映時間が12時間40分もあり、しかもギリシャ悲劇に基づいた即興演劇、バルザック、ルイス・キャロルが複雑にからんだアバンギャルドな内容。1971年に制作されて以来、上映機会に恵まれず、全編通して観た人間が世界中でも数えるほどしかいないという作品だ。権利関係がクリアになり、もし日本での上映が決まれば、世界中が注目する事件になることは間違いない。モーションギャラリー内でクラウドファンディングを実施中だ(https://motiongallery.net/projects/rivette)。(ライター・北條一浩)

AERA  2016年4月25日号より抜粋