私が10代、20代の頃は競技者として勝負の世界にいたから、絶えず勝たなきゃいけない、1秒でも速くなりたいと自分を追い込む毎日。心の豊かさとはほど遠い生活だったので、今になって味わっている感じです。

 夫の存在も大きいですね。41歳で結婚した彼は仕事もサポートしてくれ、私のことをすべて理解してくれている。私が行き過ぎると「実家に帰らせてもらいます」と言うけど(笑)、一緒にいてとても楽です。

 人生って面白いと思うのは、今、私がやっていることは周りの人と逆なんです。同世代で走る人が増えているけれど、私はずっと走ってきたからもう卒業。今は若い頃にできなかった勉強をしたいと思う。毎日新しいものを吸収し、人との出会いの中で学ぶことが楽しくてたまらない。それが50 代からの私の幸せですね。

(ノンフィクションライター・歌代幸子)

AERA 2016年4月25日号より抜粋