●小さな「快」積み重ねて

 前出の永田さんは、避難所では認知症の人に限らず、(6)「快の刺激」が大事だと唱える。避難所生活が長引けば、身も心もガチガチにこわばってしまう。こうした「硬さ」を和らげるには、すれ違うときに笑顔を交わしたり、深呼吸したりすることで得られるちょっとした快さ、「快」の感覚が心身に思わぬ良い効果をもたらすのだという。

「小さな『快』の刺激の連鎖は、人手やお金をかけなくても避難所の中に起こすことができます」

 支援する側もされる側も、健康を保ちながら長丁場に備えてほしい、と永田さんは被災地にエールを送る。

【IT活用】SNSが大活躍 絶対ではないが危機克服する術に

 4月16日未明。NHKによると、益城町の西村幸人さんら5人の家族は、就寝中にマグニチュード(M)7.3の揺れに見舞われ、倒壊家屋に閉じ込められた。しかし、19歳の長男が持っていたスマートフォンが命綱になる。LINEで「いえのしたじきになりました!」と、メッセージ送信したことが救助につながった。電話回線がダウンする中、(7)LINEなどのSNSは、稼働を続けた。

 なぜSNSは強いのか。LINE広報の奥井佳奈さんは、

「電話回線ではなく、インターネット回線を使っているから」

 と説明する。電話はアンテナから中継局などを順にたどって通信しているため、経路の一つが破壊されたりデータが集中したりすると通信が行えなくなる。対してインターネットは、回線がクモの巣(ウェブ)のように張られているため、一つがダメになっても他でカバーできる。

 LINEだけではない。本県菊池市の団体職員、椎名岳雄さん(35)は、情報入手をフェイスブックに頼っている。

「ここのスーパーはまだモノを売っている、あそこの温泉が無料になっている、あそこの水は濁っていないとか。ローカルの情報がすぐに入ってくる」

●細かいニーズも把握

 情報の拡散が速いため、一度流されると店から商品がなくなってしまうこともあるのが玉にきずか。

 熊本市の農家、園田光祥さん(37)は車中で寝泊まりしながら、各避難所を回って食料や物資の配送を続けている。

「LINEはグループトーク機能を使った回覧板。ツイッターとフェイスブックは、不特定多数に向けた拡散力が強い。使い分けが大事。外とのコミュニケーションは後者が強い。これなしの支援活動は考えられない」

 園田さんには、見ず知らずの他人からも次々と要請が寄せられる。

「オムツが足りません!」「避難所のボランティアさんたちは、きちんと食べていません」

 タイムラインにこんな投稿が上がれば、車を走らせる。

 SNSは双方向性が強みだ。これが被災者と支援者をつなぐ強力なツールになる。

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