えー、その上から目線で、値引きはたったの千円ちょっとだけ? その場でネット価格を確かめるのもえげつないので、そそくさと売り場をあとに。ネットの最安値は、税込みだったことを確認して、B店へ向かった。

 B店は、なんとブラーバの取り扱いなし。こうなると、「他店より安く」作戦のチャンスも減る。これは刻みの勝負になるな……ネギラーはそうひとりごちて、次のC店へ。

「A店では実質3万5千円まで下げてくれましたけど」

 店員に告げると、「ちょっとお待ちください」と、事務所へ引っ込んでしまった。おまけに5分も待たされたのに、「上の者に聞いてきましたが、A店さんの価格がギリギリ。それ以上は無理です」と、つれないお返事。続いてC店系列のD店へ。同じ量販店でも、店によって底値は違うこともあるが、今回はD店も、「A店さんの価格がギリギリ」と足並みが揃ってる。気がつけば4店回って、いまだ千円値引きのみ。仕方ない。重い足を引きずり、山手線で池袋に移動することにした。池袋のE店はまたしても「取り扱いなし」。あたりはもう真っ暗で、試合終了時間も迫ってきた。最後のチャンスと、F店に飛び込んだ。

 店頭実質価格は3万6千円台で、ほかとほとんど同じ。もう駆け引きしている時間はない。店内に貼られた「他店より高い場合は遠慮なくご相談ください」と書かれたポスターを指さして、遠慮なく言ってみる。

「新宿のA店、C店、D店とも実質3万5千円台。それより安くしてくれるんでしょ?」

 もはや、ため口。ところが、「いやいや、うちも緊急値下げしたばっかりなんで」と、店員はしぶしぶ電卓を叩くばかりだ。ここで泣き落としモードにチェンジ。

「500円引きでも、いや100円引きでもいいです。お願いします!」と頭を下げてみた。そうして最後に店員が差し出した電卓に表示された価格は実質3万3200円。よっしゃー。いただきます! ネット価格は乗り越えられなかったものの、約3千円の値切りに成功した。(ライター・福光 恵)

AERA 2016年4月18日号より抜粋