300人ほどが働くピーチ本社には社長ら幹部の個室はない(撮影/前田博史)
300人ほどが働くピーチ本社には社長ら幹部の個室はない(撮影/前田博史)

 帰省や旅行などの際、費用軽減に大きく貢献してくれるLCC。しかし、その安さの背景は意外に知られていない。気になる裏側を取材した。

 3月末、平日午前の成田空港。国内線搭乗ゲート前には、スーツを着たビジネス客の姿はほとんどなく、学生や家族連れ、中高年グループが目立つ。格安航空会社(LCC)、ピーチ・アビエーションの関西空港行き便の出発を待つ人たちだ。

 春休みを利用して、男友達6人と2泊3日で大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ遊びに行く千葉市在住の男子大学生(19)は言う。

「ネットで調べて、単純に一番安いピーチにしました。片道でだいたい7千円。お金、ないですから。時間がカチッと決まっている旅じゃないし、飛行機が遅れても気にしません」

 群馬県桐生市に住む女性会社員(45)は、大阪市内の企業に就職が決まった長女の引っ越しを手伝うため、自身の母親と次女も含む4人で利用した。

「1カ月くらい前に予約したら片道5千円くらい。座席は狭いらしいけど、1時間半だけなので。大手航空会社や新幹線より、4人なら合計で何万円単位で安い。これは大きいですよね」

 LCCの運賃水準は競合する大手のおおむね半額。ただ、便やキャンセル時の扱いなどの条件が同じでも、チケットを買った時期によって額は大きく変動する。冒頭に登場した2人が買ったのは、いずれもキャンセル時の払い戻しができない最安タイプだが、男子大学生が払った代金は女性会社員の4割増し。記者も関空内のピーチ本社を取材するためこの便に乗ったが、出発4日前に予約したら片道7990円だった。

 なぜこんなに違うのか。民間シンクタンク、航空経営研究所の赤井奉久所長は解説する。

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