「極端ですが、挨拶的なメールにはまず返しません。仕事の依頼が含まれるものは、担当者に転送して終わりです」

 社長業には付きものの夜の会食も断っている。

「面白いもので、家事や育児で忙しくなると、あまり誘われなくなりました」

 夜の時間の使い方は大きく変わった。寝かしつけを終えた夜11時から1時間の仕事時間を確保する。パソコンとスマホを置き、自社のグループウェアソフトを立ち上げ、未読の案件を次々に処理していく。

「会社にいる間はずっと会議が入るのでこの時間がある意味、勝負なんです」

 トップである青野さんが定時退社することで、社内にもいくつかの変化が生まれた。

 昼間に会議を開くと、ワーキングマザーの社員をはじめ、皆が参加しやすい。現場に権限の委譲が進むにつれ、意思決定が速くなり、社員たちの主体性が出てきたという。

 職場に活気が出て、かつて28%だった社員の離職率は3.8%に減っている。子育て世代の女性の転職希望者も増えた。トップの「時短術」は、本人の働き方だけでなく、会社そのものを変えてしまうようだ。(アエラ編集部)

AERA  2016年4月4日号より抜粋