たとえば台東区。この無縁社会で、人とのつながりの豊かさが秀でている。「友人・知人のネットワークで仕事を紹介された・した」で全国2位だった。

 23区屈指のコンパクトシティーの実力が表れている。東京23区研究所所長の池田利道さんのベストセラー『23区格差』によれば、区内の小売店、商店街、工場、宿泊施設の密度は23区トップ(すべて13年度東京都福祉・衛生統計年報)。密集性が雇用の流動性を高めるのは、シリコンバレーにも通じるか。

 階段から下町の家並みを見下ろすと、が通りを横切った。谷中銀座の入り口「夕やけだんだん」は、猫好きの有名スポットである。晴れた日の夕暮れには、商店街がオレンジに染まる。ここはれっきとした「谷根千(やねせん)」エリアだが、行政区画上は荒川区だ。

 そう、荒川区は歩くにはうってつけの街で、「歩ける」のカテゴリーで全国10位。「家族と手を繋いで歩いた」では同5位である。一方で「ロマンス」のカテゴリーでも上位に登場する。「ナンパした・された」で同5位、「素敵な異性に見とれた」で同6位。荒川区の高ロマンス率を支えるのは、日暮里、町屋、南千住あたりの居酒屋群と見ていいだろう。

 近年、若い女性の間で大衆居酒屋の人気が高まりを見せている。彼女たちの流入が下町にロマンスの機会を生んでいるのではないか。

「京成立石(葛飾区)や新宿ゴールデン街(新宿区)で起きている変化と同じです。荒川区のお店にも女性が来るようになった」(島原さん)

 つまり、東東京は「発見」されたのだ。(アエラ編集部)

AERA  2016年3月28日号より抜粋