社員たちは普段のスキマ時間でも、コミュニケーションを意識している。同社は社内コミュニケーションにチャットシステムを利用。例えば、時間ができた社員がチャットで「20分休憩。コーヒーを買いに行くけれど、一緒にどう?」などと呼びかける。他に手が空いている社員が応じ、散歩がてら連れだってカフェへ出向くといった光景が日常的に見られるという。

「業務中はPCに向かって個々で黙々と作業していますが、スキマ時間にリフレッシュしながら同僚とコミュニケーションをとることで、行き詰まっていた問題の解決のヒントが見つかることがある。新たな発想も生まれやすいんです」(梅内さん)

 社員とのコミュニケーションにスキマ時間を活用しているのは、オフィス環境の構築などを手がける、中部システムセンターの田中裕嗣社長。10人規模の職場では、社長が社員のスキマ時間を狙って話しかけ“プチ面談”、意思疎通を図る。「うまくいってる?」といった感じで、仕事だけでなくプライベートな話題も振る。

「形式にこだわりすぎると社員が身構えてしまうので、立ち話や移動中の時間を使いながらいろいろな情報を得るようにしています。すると社員も評価を意識することなく悩みを打ち明けてくれます」(田中社長)

 ある日、新入社員が子どもの保育園のクリスマス会でサンタ役を頼まれていることを、何げない会話で知った。まだ有給休暇が付与されない時期で悩んでいたが、「子どもの行事参加は今しかできないから」と、社内制度「ファミリー時間休暇」の活用を社長自ら勧めてあげることができたという。(ライター・青木典子)

AERA 2016年4月4日号より抜粋