オフィスビルだけでなく、高級タワマンが次々と屹立し、富裕層の住宅地としても人気が高まる港区。

 総務省のデータ(12年)によれば、納税義務者1人当たりの課税所得は904万円で、23区トップ。最下位・足立区の323万円の3倍近い。港区はいま、高額所得者のもたらす区民税で財政は盤石である。

 なぜ港区は高額所得者を呼び寄せるのか。背景の一つとして、池田さんは、「江戸時代は大名屋敷の集積地だったから」と指摘する。
 
 03年以降、続々と開業した六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、赤坂サカス、虎ノ門ヒルズは、すべてその跡地。これらの一等地を大規模開発できたから、付加価値が生まれた。

 理由は他にもある。池田さんはこう続けた。

「昔は自宅から会社まで通勤に片道1時間か、それ以上かける例も珍しくはなかった。しかし、最近は、その時間を有効活用したいと考える人が増えてきた」

 つまり、オンとオフをシームレス(継ぎ目なし)にしたいという欲求だ。仕事、会社の仲間との食事、家族ぐるみのお付き合い、学びの時間、全部まるごと港区で済ませたい――。実のところこれは、「地方都市のライフスタイルと同じなんです」(池田さん)

 つまり、高額所得者の集まる港区で起きているのは、「東京のローカル化」なのだという。

(アエラ編集部)

AERA  2016年3月28日号より抜粋