待機児童対策の一つとして幼稚園を活用するこの取り組みは厚木市独自のものだが、拠点から各保育園へ子どもを送迎する「送迎保育」は横浜市や千葉県流山市などでも行われている。また東京都江東区では、分園と本園を送迎で結ぶ「サテライト保育」を実施。交通アクセスの良い分園で親から子どもを預かった後、一定年齢以上はバスで送迎して本園で預かる仕組みだ。世田谷区も送迎保育の実施を検討している。

 こうしたサービスがあれば、仮に自宅近くの保育園に入れなくても、働く親の送迎の負担は抑えられる。また、送迎拠点が利便性重視であるのに対し、送迎先の保育施設は、より広々とした環境を期待できるケースもある。限られた資源を活用しながら、少しでも待機児童を減らそうと、自治体は知恵を絞る。

 親にしてみれば、「預けられればどこでもいい」というわけではない。保育内容の「質」に力を入れる自治体も多い。

 国立市は、今後は認可保育園の新設を推進し、認証保育所はなるべく増やさない方針だ。

「継続的で安定的な運営ができるという点で、認可園を増やしたほうが、より良い子育て支援につながると考えている」(市児童青少年課)

 一方、荒川区では、認証保育所と保育ママを区職員が巡回・指導している。認証保育所には月1回から4回、保育士の配置状況や避難訓練、お散歩のルートなど、月ごとの重点項目をチェック。保育ママは月2回ほど訪問して、保育内容や子どもの状況を確認しているという。

「待機児童解消のために様々な形態の保育施設が出てきている中で、どこでも一定の質が保たれるようにしたい」(区保育課)

●仕事を諦めなくても

「質」を担保すれば、人気が集中しがちの認可保育園以外も、保育の受け皿として機能しやすい。だが、質への対策は自治体ごとにばらつきがある。「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは指摘する。

「保育士の人員配置、園庭の有無、認証保育所も含めた巡回状況が、質を考えるうえで大事なポイント。保育の面では郊外のほうが圧倒的にいいのですが、通勤を考えると、23区に人が集中してしまうようです」

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