「話は逆です。ゴールデンの時間帯に放送する、クイズ番組のメインターゲットは子どもとその親。番組が私に合わせているのではなく、子ども時代の知識の歩留まりで勝負している私が番組の出題傾向に合っているのです。実際、化学や物理の難問が出るようなクイズ番組は歯が立ちません」

 やくさんのベースにあるのは、子どものころ、好きで読み込んだカラー図鑑と地図だ。昨年5月、学力王の2連覇がかかった戦いで、決め手となったのが「オコジョ」というイタチ科の動物を言い当てる問題。四十数年前、図鑑で得た知識が浮かび上がったという。

 やく家には今、居間、寝室、仕事場の3カ所に辞書が置いてある。わからない言葉が出てきたらすぐ調べるためだ。いまだにインターネットは使わない。

 やくさんはこの日、2日前に新たに知った「瓔珞(ようらく)」という言葉について話し始めた。瓔珞は仏像の首や胸などにみられる装身具だ。

「知らない言葉に出合ったらすぐ調べる。そして、人に話すことが大事。そうすると知識が定着します。瓔珞は、これでもう大丈夫」

 子ども時代の「学びの蓄積」プラス、大人になっても枯れない旺盛な知識欲。それがクイズ王たちを作り上げているようだ。(アエラ編集部)

AERA  2016年3月14日号より抜粋