ネット社会ではアレルギーの情報を集めやすくなった半面、間違った情報で子どもを危険にさらしてしまうリスクが高まっている(撮影/写真部・植田真紗美)
ネット社会ではアレルギーの情報を集めやすくなった半面、間違った情報で子どもを危険にさらしてしまうリスクが高まっている(撮影/写真部・植田真紗美)

 アレルギーだと思って避けてきたのに、食べても大丈夫だった。そんな事例は珍しくない。なぜそのような、食品の「無駄な除去」は起こるのだろうか。

 卵、牛乳、小麦……。特定の食物に対してアレルギー反応を起こす食物アレルギーの子どもは、乳幼児の5~10%。原因となる食物(アレルゲン)を食べると、多くは2時間以内に、じんましんや唇の腫れ、せき込むなどの症状が現れる。重症の場合は、呼吸困難やショック状態といったアナフィラキシー(全身性の反応)を起こし、命を落とすこともある。

 都内に住む真穂ちゃん(5)は生後半年でじんましんが出たことがきっかけで、近所の小児科開業医を受診した。血液検査と皮膚テストで卵と小麦に高い陽性反応が出たため、医師から除去するよう指導された。以来、母親の優子さん(40)は除去食づくりに取り組み、真穂ちゃんも友だちが食べているお菓子を横目で見ながらがまんするなど涙ぐましい努力を重ねてきた。

 しかし今年初め、父親の転勤にともなって転院し、新しい主治医の指示で「食物経口負荷試験」(後述)を受けたところ、「卵にも小麦にもアレルギーはありません。普通に食べてください」と告げられた。

 優子さんは病院の売店で買ったパンを恐る恐る口にする娘の姿を見て、うれしい半面、「今までの努力は何だったんだろう……」と呆然となった。

次のページ