組織の中で働く人にとって、環境の変化は避けられない。「転び方」を身につけ、大けがをしないようにすることも大切だ(撮影/写真部・植田真紗美)
組織の中で働く人にとって、環境の変化は避けられない。「転び方」を身につけ、大けがをしないようにすることも大切だ(撮影/写真部・植田真紗美)

 環境が大きく変化するとき、人は精神の不調に陥りやすい。転職や異動はもちろん、昇進や育休からの復職時もだ。

 面接を受けに行ったとき、オフィス全体に漂う説明のできない違和感があった。なんとなく落ち着かず、ここで働くことが想像できなかった。今でこそ「あのときの直感を大事にすればよかった」と思えるが、「面接なんだから落ち着かなくて当たり前。きっと気のせい」と自分に言い聞かせた。

 映像制作会社から採用の連絡をもらった女性Aさん(32)は、違和感のことも忘れて舞い上がった。契約社員だが、大手の系列企業で、華やかな仕事も多い。前職は同業だが、社員5人のワンマン会社。やっとまともな会社に就職できた、と喜んだ。

「配属は希望部署と違いましたが、目の前の仕事のことは見ないようにして、ゆくゆくは希望部署に異動できるに違いないと、そればかり考えていました」

 先輩社員にキツイ感じの女性がいた。とにかく仕事ができる人だったが、周囲が同じレベルで仕事をこなせないと露骨に嫌な顔をする。電話も自分が言いたいことだけ言ってガチャ切り。彼女が原因で何人も辞めていき、立て直しのために新たな上司が配属されたタイミングだった。上司はよく気にかけてくれたが、「自分が来たからにはこれ以上、メンタル不調者は出さない」という意気込みに気が引け、相談できなかった。

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