本来、就職採用選考については、家族の状況や生活環境など本人の適性や能力と関係のない事柄で採否を決定してはならず、厚生労働省も注意喚起している。個人情報保護の観点からも、職業安定法などを根拠に、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、従前の職業、労働組合の組合員であることなど、社会的差別の原因となるおそれがあることを尋ねてはならないとされている。結婚や出産について聞くことも、男女雇用機会均等法の趣旨に抵触する恐れがある。

 だが実際には、能力選考ではなく“人格選考”とも言える状況が横行している。連合が就職活動経験がある20~25歳の男女に行った「就職活動に関する調査」(2014年)では、「就職差別につながる不適切な質問」について尋ねている。本来は面接で聞くべきでない、本人に責任のない事項を「聞かれた」割合を見ると、「家族に関すること(家族の職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)」は40.1%、「本籍・出生地に関すること」が34.8%に上った。「就職活動で“不当な選考をされた”と感じたところ」(複数回答)でトップは「学歴」(26.9%)、次いで「容姿」(15%)だった。

 前出のシンジさんは、面接では東京大、一橋、早稲田、慶應、上智クラスしか残っていない企業もあったという。学閥採用は、就職活動が解禁される前に大手を中心にOB・OG訪問と称した「リクルーター面談」が実際の採用選考として進められることが多い。ある商社の人事担当者はこう本音を漏らす。

「偏差値の低い大学から採用して失敗すれば、『だからやめとけと言ったはずだ』と上司に責任転嫁されてしまう。学閥で採用すれば失敗しても『今年はしょうがない』で済む」

(文中カタカナ名は仮名)

AERA 2016年2月15日号より抜粋