「ワシントンもない! ウォール街もない! この選挙は、市民の、市民による、市民のための選挙だ!」

 サンダースが叫ぶと、集会場にキャーッと黄色いどよめきが起きる。歓声のピッチが高い。彼を囲むのも、頬が赤い、有権者になっているのか疑ってしまうほど若い支持者ばかりだ。

 タフツ大学によると、17〜29歳のアイオワ州の有権者で、サンダースに投票したのは84%にのぼり、クリントンの14%に大差をつけた。

「サンダースの事務所にボランティアに行ったら、スタッフは2人しかいないのに、400人ものボランティアが集まっていた!」とツイートしたのは、フロリダ州に住む大学生ジェイ・カネラ(19)。

「ミレニアル(1980~2000年代前半に生まれた世代)は、テレビや新聞よりも早く生の情報をキャッチして生きているから、私たちは政治ニュースは曲げられて報道されていると思っています」と批判したうえで、続ける。

「その中でサンダースは、最も信頼できます。メディアは無視してきたけど、彼は長いことブレずに、同じ問題と戦い、党派政治の中で決して妥協しなかった。誠実さこそが、彼の最大の強みです」

 カネラの話からミレニアルの熱狂ぶりがわかる。彼女が住むフロリダ州の予備選挙は3月15日と1カ月以上先だが、ボランティアは増えるばかり。個人の家やカフェに10~20人が集まり、持ち寄った名簿の家に電話をかけ、戸別訪問を展開している。大票田のフロリダ州だけに、サンダースのボランティア事務所はすでに282カ所にのぼる。

「もちろん、世界は女性のリーダーをもっと必要としているけど、クリントンは支持できません。あまりに政治的だからです」(カネラ)

 この世代は、数百万円の学費ローンを抱えたまま大学を卒業する。低成長経済のもと、親の賃金は上がらず、思うような職にも就けない環境で育ったミレニアルは、根強いアンチ支配層、つまり反政治家、反ウォール街の感情を抱く。徹底した弱者救済と、伝統的なワシントン政治への批判を繰り広げるサンダースは、政治不信が根強いミレニアルの心をつかみ、「反乱」を引き起こしている。

AERA  2016年2月15日号より抜粋