「進歩的な候補者が、1500万ドルもウォール街から受け取っているのは、信じられない。私の選挙戦は市民がお金を出し合っている」とクリントン(上)を批判するサンダース(下)。「進歩のための闘いは長年やってきた。データの話をするなら、私は大差で勝ってみせる」とクリントンは反論する(写真:gettyimages) @@写禁
「進歩的な候補者が、1500万ドルもウォール街から受け取っているのは、信じられない。私の選挙戦は市民がお金を出し合っている」とクリントン(上)を批判するサンダース(下)。「進歩のための闘いは長年やってきた。データの話をするなら、私は大差で勝ってみせる」とクリントンは反論する(写真:gettyimages) @@写禁

 約9カ月に及ぶ米大統領選挙戦が本格的なスタートを切った。最初のイベント、アイオワ州党員集会で、候補者も有権者も驚かせたある「異変」とは――。

「ヒラリー・クリントンは、アイオワ州党員集会に勝利しました」

 2月1日夕の党員集会が終わって数時間後の2日午前3時過ぎ。予備選挙で民主党指名候補を狙うヒラリー・クリントン陣営のアイオワ州担当者が、ツイッターでそう宣言した。夜通し開票結果を放送していたCNNなど米メディアは、クリントンがライバルのバーニー・サンダース上院議員にコンマ以下のリードしかしておらず、どこも当確を出していなかった。フライングの勝利宣言ともとれるが、ツイートはこう続く。

「報告と十分な分析により(中略)、サンダース上院議員がクリントンのリードを抑えるすべはありません」

 ようやく2日午後になって、クリントンの勝利が公式に発表された。

 しかし、1月下旬、クリントン陣営から寄付を求めて日に何通も届いたメールの内容は、悲愴感を帯びていた。

「アイオワ州と(次の予備選挙がある)ニューハンプシャー州の両方で、サンダースが勝利する可能性があります。ヒラリーは今こそあなたを必要としています」

 昨年まで、予備選挙の候補者全員に支持率で2ケタの差をつけていたとは思えない切迫感だ。

サンダースは、予備選開始間際にクリントンを猛追し、各社の世論調査での支持率はほぼ互角に並んだ。これが「異変」の一つだ。

 サンダースは、ニューヨーク生まれで、政治家になる前は大工やドキュメンタリー映画監督をしていた。東部バーモント州選出の下院議員を経て、無所属で上院議員に2度当選。議会では常に一匹狼だ。自らを「民主社会主義者」と呼び、民主党とは一線を画す超リベラル派だが、今回は民主党の指名候補を目指す。つまり、同党にとってサンダースはよそ者で、由緒正しい左派中道のクリントンに比べれば傍流にすぎない。その彼を「台風の目」にしたのは、若者の反乱だった。

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