その大伯父には借金があり、年金を抵当に入れていた。女性の両親が借金を肩代わりし、生活を立て直すことで、年金の範囲で借金を返せるようにはなった。その後、大伯父を介護施設に入れるところまで、母が奔走した。母が強調していたのは、「一切の手続きに膨大な手間と時間がかかって大変」という事実だった。世代をまたいでいるうえ、手続きに行くのが「甥の配偶者」という遠い関係。全ては身分を証明するところから入らなければならなかったという。

 時々、大伯父の入所する施設から母に連絡が来るというが、母は「時間をかけてフェードアウトするつもり」と話している。

 そんな母の経験が重しになっている女性の子どもは一人っ子。貧困や介護負担が世代をまたいで連鎖すれば、それは「この子」にダメージが集中することを意味する。女性は言う。

「だから、(きょうだいを世話する責任は)私のところでせき止めないとダメだと思うんです」

AERA 2016年2月8日号より抜粋