辞任会見で指名されて質問したのは甘利氏の「番記者」が大半で迫力不足。スクープした週刊文春の記者は手を挙げても当ててもらえなかった(撮影/山田厚史)
辞任会見で指名されて質問したのは甘利氏の「番記者」が大半で迫力不足。スクープした週刊文春の記者は手を挙げても当ててもらえなかった(撮影/山田厚史)

 アベノミクスの司令塔だった甘利明経済再生相が辞任した。盤石だった政権内のバランスが、崩れる契機になるかもしれない。

「築城3年、落城1日」。年頭所感で、今年の政権運営について触れた安倍晋三首相の言葉が、甘利氏の軌跡を言い当てている。

 政権の重要閣僚として振る舞うようになったのはこの3年だ。第2次安倍内閣で、経済財政相に就任。成長戦略を担当しアベノミクスを仕切る。併せて経済再生担当、社会保障・税一体改革担当。環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加が決まると「TPP担当」の肩書まで加わった。さらに、「原子力ムラ」の政界代表であるかのように原発再稼働の旗を振った。

 たった一人でアベノミクスから原発まで。重要課題を背負い込むことには理由がある。

「甘利さんの後ろ盾は経済産業省・財界連合」。霞が関ではそうささやかれている。法人税減税、TPP推進、円安誘導、労働法制の規制緩和、電力自由化、原発再稼働。これら政権の経済政策を誘導してきたのは財界と経産省だ。甘利氏はその象徴的存在だった。

 菅義偉官房長官とともに、官邸にいるもう一人のキーマンが今井尚哉氏だ。経産官僚から首相の政務秘書官に抜擢され、面会相手や日程管理などを担当する。今井敬・元経団連会長(現・日本原子力産業協会長)の甥でもある。

 甘利氏は、経産省を所管する党商工部会長や衆院商工委員長などを務め、第1次安倍内閣で経産相のポストを射止めた。ここで経産省との関係が深まった、といわれる。

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