●モーレツ夫と専業主婦

「『家族のカタチやあり方』が多様化すれば、社会はよりよくなると思う」という質問には、女性の過半数が肯定的な意見だったが、男性は過半数が否定的だった。年代別ではやはり、年配層の50代、60代のほうが家族の多様化について否定的にみている。

 血縁を重んじ、結婚したら子どもを産む……。なぜこうした伝統的価値観がいまだに根強いのか。早稲田大学の棚村政行教授(家族法)はこう説明する。

「法律や制度が変わったとしても、人々の意識はなかなか変わらない。戦後、新しい民法で『家制度』自体は廃止されたが、人々に刷り込まれた価値観は変わらず、潜在的意識に根強い家制度が残っているのです」

 さらに、1960~70年代にかけての高度経済成長期、夫は外でモーレツに働き、妻は専業主婦として家庭を守るという、男女の性別役割分担の構図ができた。こうした戦後版の「家制度」が、価値観を再構築した面もあるという。

 刷り込まれた価値観は、差別にもつながる。

 昨年12月、岐阜県議会本会議で、自民党の県議(74)が「同性愛は異常」とヤジを飛ばし、後の記者会見で「(同性愛が)社会全体に蔓延することに危機感を持っている」と持論を述べた。

 前出の古平さんは、まず「新しい家族のカタチ」を知って受け入れることがスタートと説く。

「そのためには教育が必要です。学校ではLGBTについて学ぶ場づくりが始まっています。学校や家庭で大人が子どもにさまざまな家族のカタチがあることを教えていくことが、多様性を認める社会につながっていきます」

AERA 2016年2月8日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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