「日本酒や工芸は、その土地だからこそ楽しめるものもたくさんあります。ネットや本の情報だけならここまで興味を持てなかったでしょうね。自分の足で訪ね、目で見て、舌で味わい、香りを知る。そうやって体験に落とし込むから、本物の知識になるんだと思います」

●第二の人生のスタート

 ちなみに全行程でいちばん印象に残っているのは……。

「奈良の大峰山の西の覗もすごかったし、24時間以上かけて船で行った小笠原諸島も印象深いですね。多くの人間国宝の方々にお会いできたのも忘れられない思い出。美味しいもの、素敵な宿もたくさんありました。どれか一つというのは難しいなあ」

 日本一周の旅は終わった。だが中田英寿の旅は、続く。

「ゴールはないですね。旅が続くというより、さらに先に延びたという感じ。この旅をしたことで、よりたくさんの次の旅先が見つかりました。日本文化を世界に広めるプロジェクトをもっと力を入れてやっていきたいし、それとは別に目的のない旅も続けて、また新たな発見をしたいと思っています。この旅でのすべての経験、出会いが自分の財産ですし、ここから第二の人生が始まった。サッカーをやめてからずっと探していた、サッカーよりものめり込めるものを見つけられた気がします」

 サッカーの次は、文化の“日本代表”として。中田英寿が再び世界を目指す。

(ライター・川上康介)

AERA 2016年1月25日号

※中田英寿さんが全国を旅して発見した美味しい日本酒・焼酎を集めたイベント「CRAFT SAKE WEEK@六本木ヒルズ屋台村」が、東京・六本木ヒルズアリーナで、2月5日(金)から10日間にわたり開催される予定です。詳細はhttp://craftsakeweek.com/