そんな内容にとどまった背景には、水面下でさらなる再編に向けた動きを加速させているからだ。

 パソコンは、富士通と、ソニーから独立した「VAIO」で統合交渉が進行している。国内首位はNECが中国大手「レノボ」とつくった合弁会社の「NECレノボ」だが、3社を集めればNECレノボのシェアを上回り、国内首位になれる。3社の幹部も「規模があれば、部品の調達などコストが削減でき、メリットは大きい」と期待する。

 白物家電についても、シャープとの統合案が取りざたされている。その背後にいるのが、政府系ファンドの「産業革新機構」だ。

 国内企業の再編や産業構造の転換をめざし、09年に官民が設立した機構はもともと、シャープの液晶部門の立て直しに名乗りを上げていた。

 シャープ本体から液晶部門を分社化して出資。すでに出資している液晶大手「ジャパンディスプレイ」との統合を検討しているとされる。シャープの買収には、台湾の電子機器メーカー、鴻海(ホンハイ)精密工業も出資に意欲を示すが、日本政府には「技術が海外に流出するのでは」と心配する声が根強い。シャープとジャパンディスプレイの統合で「日の丸液晶」体制を整え、ライバルの韓国勢などへの対抗を狙っているという。

 そこに起こった東芝問題。そこで、白物家電でも「日の丸連合」の設立を前向きに検討し始めた模様だ。

 かつて日本の家電は世界を席巻していたが、最近は中韓メーカーが勢いを増している。テレビでは、韓国のサムスン電子やLG電子がシェア上位を占める。パソコンでは中国のレノボ、白物家電でも中国のハイアールなどが存在感を高めている。

 メーカー数が多く、国内での競争が激しくなって利益が稼げず、海外で展開する力が減殺されている、とされていた日本の家電業界の弱点が、ここにきて抜き差しならないところまでクローズアップされてきている。

 機構の勝又幹英社長は「一般論として、日本の家電メーカーは数が多すぎる」という認識を示した上で、「長年競争してきた相手といきなり一緒になるのは当事者同士では難しい。再編の呼び水として、私どものような存在があってもいい」と意欲をのぞかせる。

AERA  2016年1月25日号より抜粋