ヤクザを社会から排除するだけでいいのか。作品は難しい問いを投げかける(※イメージ)
ヤクザを社会から排除するだけでいいのか。作品は難しい問いを投げかける(※イメージ)

 本物の暴力団員が「われわれや家族に人権はないのか」と訴える。そんなドキュメンタリー映画が公開中だ。ヤクザを社会から排除するだけでいいのか。作品は難しい問いを投げかける。

「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

 スクリーンに日本国憲法14条が映し出される。年明けに公開された映画「ヤクザと憲法」は、暴力団のリアルな実態を追った異色のドキュメンタリーだ。昨年3月、東海テレビで放送されて話題を呼び、映画化された。

 監督は東海テレビの土方宏史(ひじかたこうじ)さん(39)。報道部に異動後、2013年に愛知県警サブキャップとして捜査4課(暴力団犯罪)を担当した。そこで見た暴力団の実態は、自分の想像と乖離しているのではないかと思ったのが、制作のきっかけだ。

「ヤクザがいま、どういう日常を送り、何を考えているのか。なぜヤクザになったのか、そして世の中がヤクザをどうしようとしているか。現代社会とヤクザの関係を伝えたいと思いました」(土方さん)

 取材には三つの条件を設けた。

(1) 礼金は支払わない(2)収録テープ等を放送前に見せない(3)モザイクは原則かけない

 それらをすべて了承した大阪府堺市の指定暴力団・二代目東(あずま)組二代目清勇会に、土方監督とカメラ、音声の計3人が入り、半年間カメラを回し続けた。

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