安藤ハザマ「大地震にも負けない道路」安藤ハザマ 国際事業本部 土木部 海外土木作業所課長 伊澤良則(45)撮影/伊ケ崎忍
安藤ハザマ
「大地震にも負けない道路」

安藤ハザマ 国際事業本部 土木部 海外土木作業所
課長 伊澤良則(45)
撮影/伊ケ崎忍

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回は安藤ハザマの「ニッポンの課長」を紹介する。

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■安藤ハザマ 国際事業本部 土木部 海外土木作業所 課長 伊澤良則(45)

 ネパールをマグニチュード7.8の大地震が襲ったのは、今年4月。余震による被害を含め、死者は8900人を超えた。支援物資を運ぶ生命線となった道路がある。首都カトマンズとインド国境付近を結ぶ「シンズリ道路」だ。多くの道路が壊れるなか(写真)、ほぼ無傷で残った。

 この道路は日本の途上国援助(ODA)で建設された。安藤ハザマが中心となって1996年に着工し、今年3月に全線開通した。急峻な山岳地域に大型重機を持ち込むことは難しく、工事は現地の人たちの力に頼らざるを得ない。延べ450万人がかかわる大工事になったが、文化の壁が立ちはだかった。

「大切なのは、相手の文化を理解し、尊重すること。『工事してあげる』ではなく、『工事させてもらう』という気持ちが大事です」

 そう話すのは、同社で海外での土木工事を担う伊澤良則だ。シンズリ道路の建設には、2009年から携わった。道路斜面の補強工事では現場所長を務め、計120人をまとめた。現地の作業員には、まずヘルメットをかぶるところから教えた。

 近隣の住民から「雇ってくれ」「私の家の前まで道路を造ってほしい」と頼まれることも珍しいことではない。断ると、機械の保管庫に鍵をかけられた。そのたびに工事は中断。日本人スタッフの宿泊施設の扉が外側から施錠され、約2カ月間、軟禁状態になったことも。その都度、根気よく話し合った。

「ネパールのごちそうであるヤギ肉を囲むパーティーを段取りしたり、ティカ(額の赤い印)を受ける儀式に参加したりして、信頼関係を築きました」

 95年、宇都宮大学大学院工学研究科を修了して入社。98年から今の部署だ。ラオス、エルサルバドル、ニカラグア、ミャンマー、フィリピンに赴任し、橋や道路を造ってきた。相棒はギター。浜田省吾や尾崎豊の曲が途上国の工事現場に響く。
(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(ライター・安楽由紀子)

AERA 2015年9月7日号