評価・研究は、海外で先行してきた。21世紀に入ってからは欧州各国で展覧会が開催されて好評を博しただけでなく、学術的な研究やシンポジウムも行われている。2013~14年にかけては、集大成とも言える「春画 日本美術における性とたのしみ」展がロンドン・大英博物館で開かれ、大成功をおさめたことはニュースにもなった。

 これでようやく、日本でも展覧会が開かれる――と思われたが、開催場所がなかなか決まらない。細川護熙理事長の決断で、ようやく永青文庫での開催が決まったときには、多くの美術ファンから喜びと驚きの声があがり、記者会見を実況中継するメディアもあった。

 永青文庫の学芸課長、三宅秀和さんによると、2015年9月19日に始まった春画展には12月初めまでに15万人が来場。日によっては入場待ちの行列ができる。「これまでにない数のお客さまにいらしていただいています」というほどの「成功」は、「長年にわたり収集、研究を進め、出版に尽力されてきた、研究者の方々の努力があってこそ」だ。

 春画を一方的に「猥褻なもの」と否定する空気があるなかで、1990年代以降、春画についての出版物が数多く出されるようになってきた。こうした出版物を通して、春画の魅力、意義についての理解が広がり、海外での評価もあって、今回の春画展の成功がある。

 日本人が自らの来た道を、より深く知ろうとしている。そんなムーブメントの表れなのだろうか。

AERA 2015年12月21日号より抜粋