原田は、そう自問してきた。活動では双方向性を意識する。まずは政治家という存在を、「あっちの人」から身近に引き寄せたい。政治家と食事をともにしたり、フットサルをしたりするイベントを仕掛け、政治の入り口に導く取り組みに力を入れる。

「普段の生活と政治がつながっていると感じられるような見せ方が大事。生活のなかで見つけた関心を、政治に結びつける考え方も伝えている」(原田)

 SEALDsも“次”に向けて動きだしている。夏の参院選を目標に、野党に選挙協力を促す取り組みを始めた。

 研究者らでつくる立憲デモクラシーの会など4団体との会合に、野党5党の代表者を招いて、各選挙区での候補者調整に入っている。統一候補を野党から出すだけではない。地域で長く活動する市民団体に有力な候補者がいれば、彼らを政党が推薦するような形も模索する。

「安保関連法制反対、立憲主義の回復、個人の尊厳の回復。この3点で連携することは、野党側から大筋で合意をもらっている。次の選挙で、市民と野党が同じ方向を向いて戦うんだというメッセージを、強く打ち出すことがいまの課題です」

 SEALDsの本間信和(21)は話す。彼らのデモは、現政権に問題意識を持つ人々の求心力になり、野党結集で中心的役割を果たすまでになったのだ。

●争点は市民が決める

 リベラル勢力はこれまで、こうした広範な協力体制を築けなかった。14年の都知事選が典型だ。このとき、脱原発を掲げる二つの非自民陣営の間で、対話の糸口を探し続けた三宅洋平(37)が振り返る。

「あのときは理念同士がぶつかり、それを乗り越えることができなかった。リベラルの面倒臭さを痛感した体験だった。彼らの話法は『断固戦う』。対話のきっかけを閉ざすような言葉を前に、政治が本質的に変わらなければいけないと感じた」

 そうした閉塞感のなかで登場したのがSEALDsだった。本間はこう話す。

「僕らには、安保関連法制に反対というほかにイデオロギーがない。党派性がないのがよかったんじゃないか」

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