11月24日午前。外国訪問から帰ったばかりの安倍首相と谷垣禎一幹事長が自民党本部で会った。同席した宮沢税調会長は会談後、「首相は軽減税率は4千億円の枠内で行うことに理解を示した」と記者に語った。流れを変えたい自民・財務省側の巻き返しだった。

 しかし、これも不発に終わる。

「オレの知らないところで首相に会わすとは何事か」と菅義偉官房長官が激怒。田中一穂財務次官を呼びつけ「4千億円では足りない。枠を拡大する財源を示せ」と迫った。田中次官は首を縦に振らず、5分で退席させられたという。

 結局、自民党の谷垣幹事長が折れて決着した。

 公明党の協力がなければ選挙を戦えない、という事情はあるだろう。しかし、税制という国家の根幹が、政党間の貸し借りで決まっていいのか。

しかも、唯一決まっている財源4千億円は、低所得者の医療・介護費に上限を設ける「総合合算制度」に充てるはずの予算だった。

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