最高裁大法廷は裁判官15人のうち、女性は3人で、これでも過去最多。女性3人全員が判決とは反対の「違憲」と判断した。意思決定の場でのジェンダーバランスの重要性を強く印象付けた (c)朝日新聞社
最高裁大法廷は裁判官15人のうち、女性は3人で、これでも過去最多。女性3人全員が判決とは反対の「違憲」と判断した。意思決定の場でのジェンダーバランスの重要性を強く印象付けた (c)朝日新聞社

 最高裁は選択的夫婦別姓を認めなかった。なぜ、名字を選ぶ自由が認められないのか。事実上不利益を被っている女性たちの悲痛な思いが、届かない理由がある。

 夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定について、最高裁大法廷は「合理性があり合憲」とする初めての憲法判断を示した。夫婦同姓制度は、「社会に定着し、家族の一員であることを対外的に示し、識別する機能を持つ」として意義を認めた。

 また、夫婦がどちらの姓を選ぶかは「協議にゆだねている」として、性差別にはあたらないと判断した。アイデンティティーの喪失感があるといった不利益を受ける場合があると認める一方で、旧姓の通称使用が広まることで「不利益は一定程度緩和されうる」とした。

 今回の「合憲」判決は、15人の裁判官のうちの10人の多数意見だった。「違憲」とした5人は、女性裁判官3人全員と、弁護士出身の男性裁判官2人だ。5人は違憲とした理由も示した。

 岡部喜代子裁判官は、姓の変更の支障や負担は「ほぼ妻に生じている」と指摘。「(どちらの姓を名乗るか決める)意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用している」として、「個人の尊厳や両性の平等に照らして合理性を欠き」、憲法違反だとした。さらに、「多数意見は、通称使用が広まることで、不利益は一定程度緩和されうるとする。しかし、だからといって、別の姓を称することをまったく認めないことに合理性はない」と少数者への視点を示した。この意見に櫻井龍子、鬼丸かおる各裁判官も同調した。

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