SPACE TRAVEL代表高松聡さん(52)電通時代のポリシーは「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない」。電通の経営者が作った行動指針「鬼十則」のひとつだ(撮影/写真部・大嶋千尋)
SPACE TRAVEL代表
高松聡
さん(52)
電通時代のポリシーは「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない」。電通の経営者が作った行動指針「鬼十則」のひとつだ(撮影/写真部・大嶋千尋)

 数々の有名CMを手掛けてた広告クリエイターが、突如引退を宣言した。その理由は、「宇宙に行く」からだという。

「平和」、そして「自由」。元広告クリエーターの高松聡さん(52)が手がけるCMは、いつも大きすぎるテーマを背負っていた。

 国境線のように地面に並ぶカップヌードルを子どもたちが次々と手に取り、境界線をなくすかのように食べる。最後に流れる「NO BORDER」のコピーは、アメリカ同時多発テロ後に「平和」を願って作られた。

 戦争がなくなり、平和が訪れた近未来を描いたアニメーション「FREEDOM」も企画、その一部をCMで流した。わずか15秒の映像で問うたのは、「戦争がなくなれば、人は自由を謳歌できるのか」と、これまた深いテーマ。多くの大作を手がけた高松さんだが、50歳で突如「広告クリエーター引退」を宣言した。宇宙に行くのだという。

 6歳のころ、月面着陸を見て宇宙飛行士に憧れたが、視力が足りず22歳のときに断念。入社した電通では、一貫してアウトサイダーの道を歩んだ。

 20代のときは、業界の王者では珍しく「新規開拓」を担当した。ある外車ディーラーには販売していた車を自腹で買い、「御社のユーザーですが、広告について提案があります」 と乗り込んだ。

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