今作はまず脚本を作り、山中一揆義民顕彰会のメンバーへのインタビューを収録したショートドキュメンタリーを制作。13年、岡山県内を中心に巡回上映会やミーティングを行って協力を求めた。古着やわらを集めて着物やわらじを作る。ロケに使えそうな場所の写真を提供してもらう。寄付を求め、エキストラを集める。主要スタッフ以外の協力者数は延べ900人弱にものぼり、製作費の半分は一般から調達できた。

 作品は地域の歴史に詳しい複数の研究者に不自然なところがないか見てもらったが、厳密な時代考証はしていない。「時代考証をすれば、映画は面白くなくなると思っている」からだ。

 治兵衛の幼なじみとして神がかった架空の男性を登場させるなど、あえて幻想的にした場面もある。史実を伝える以上に考えたかったのは、自由について。「たとえ権力に抗あらがう民衆であっても、そこからすら抗うことができる」。治兵衛は同調圧力に抵抗し、生きるために逃げることを選ぶが、それができるのが豊かさではないか、と山崎さん。「一揆の話を通して、いかに戦争をしないかを投げかける」今作を、反戦映画と言い切る。

 すでに岡山県を中心に40カ所で上映を行い、若者を中心に多くの共感を得た。今度は全国の人がどう見るか、結果を待つばかりである。

AERA 2015年11月30日号より抜粋