「のりたま」パッケージの登場は1960年。にわとりのボディーがそのまま卵を表し、スコーンと底抜けに陽気なその絵は、なるほど、高度成長期の昭和の明るさそのものである。

 復刻は一朝一夕にできるものではない。丸美屋食品では、55年の間に「のりたま」パッケージデザインの大きな変更を7回行っている(現在で8代目)。同社内で「虹」もしくは「波」と呼ばれている流線形ラインのうねり方、カラーリングの変化がキモだが、実際はもっと細かい微調整がさらに十数回はなされているという。

 そうした努力は、同じく55周年企画として発売した「ひよこチップ入り手のりたま」に如実に表れている。

 のりたまの中にひよこの顔が描かれたかまぼこチップを入れるというアイデアだが、かまぼこの微妙なカットの具合によって、ご飯の上に出てきたら“あら、かわいい!”になるはずのひよこが、ガンを飛ばしているような怖い顔になってしまう。それを避けるため、日本に一人しかいない精妙なスライス技術を持った職人さんのスケジュールを待ちながら、何度も試行錯誤を重ねたという。

AERA 2015年11月23日号より抜粋