日産自動車の「IDSコンセプト」。自動運転モードにするとハンドルが収納され、運転席の前には大型モニターが姿を現す(撮影/写真部・東川哲也)
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日産自動車の「IDSコンセプト」。自動運転モードにするとハンドルが収納され、運転席の前には大型モニターが姿を現す(撮影/写真部・東川哲也)
メルセデス・ベンツの「F015」。向かい合わせにもできるシートの周囲には、手をかざすだけでも反応する大型スクリーンがある(撮影/写真部・東川哲也)
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メルセデス・ベンツの「F015」。向かい合わせにもできるシートの周囲には、手をかざすだけでも反応する大型スクリーンがある(撮影/写真部・東川哲也)

 今年で44回目を迎えた東京モーターショー。部品メーカーを含む11カ国の計160社が参加し、東京・有明の東京ビッグサイトで11月8日まで開かれた。なかでも注目を浴びたもののひとつが、自動運転車だ。

「日産がやがて実用化する技術は、クルマとドライバーの関係に革命を起こす。お見せしましょう」

 10月28日の報道向け内覧会。プレゼンに立った日産自動車のカルロス・ゴーン社長が、スーツのポケットからスマートフォンを取り出す。画面に触れると、銀色に輝く流線形の車がステージ上にゆっくりと進み出た。車内は無人。世界初お披露目の自動運転車「IDSコンセプト」だ。

 人間が運転することもできるが、完全自動運転に切り替えるとハンドルは収納され、人工知能(AI)が周囲の状況を判断して車を操る。

 ドライバーはAIに運転を任せれば、大画面で映画やテレビを楽しんだりメールをチェックしたりできる。AIは持ち主の行動パターンも学習。ブレーキを踏むタイミングや先行車との距離といった運転の癖を「安全運転」の範囲内で再現し、他人が運転する車に乗った時のような違和感を減らす。音声で尋ねれば、自分の好みに合いそうな近くのレストランを薦めてくれ、選んだ店まで連れていってもくれるという。

 ドイツのダイムラーの高級車ブランド、メルセデス・ベンツのコンセプトカー「F015」も注目を集めた。完全自動運転に切り替えられるのはもちろん、ドライバーが目的地で降りた後は車が自ら駐車場所を探して待機。再び乗る時はスマホなどで呼び出せる。

 広々とした車内には独立したシートが四つあり、自動運転時には前列の2席を後列と向かい合わせにもできる。周りにはぐるりと大型スクリーンが設置され、手をかざしたり振ったりするだけでタッチパネルに触れるのと同じように操作できる。車体前面にはプロジェクターを備え、AIが歩行者に道を譲る判断をすると、目の前の路面に横断歩道の画像を投影するとともに「どうぞお先に」と音声による案内もする。

 まさに夢のクルマだが、いずれもコンセプトカーで発売時期は未定。ただ、そんなに遠い未来でないことも確かだ。完全自動運転の前提となる個々の技術は着々と完成に近づいている。

AERA 2015年11月23日号より抜粋