ホンダ会長 池史彦(いけ・ふみひこ)1952年生まれ。上智大学外国語学部卒。82年ホンダ入社。国際的な交渉に多く立ち会う。2013年代表取締役会長。14年日本自動車工業会会長に就任(写真:ホンダ提供)
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ホンダ会長 池史彦(いけ・ふみひこ)
1952年生まれ。上智大学外国語学部卒。82年ホンダ入社。国際的な交渉に多く立ち会う。2013年代表取締役会長。14年日本自動車工業会会長に就任(写真:ホンダ提供)

 英語を勉強していても、英語での「雑談」となると苦手、という人も多いのでは。交渉のプロ、池史彦ホンダ会長に、雑談力について聞いた。

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 英語での雑談は一番苦手ですね(笑)。シャイな国民性が根っこにあると思いますが、ビジネスとは違う日常的な語彙(ごい)や会話のつかみもいるので、ハードルが上がります。

 とはいえ、単刀直入にビジネスの話をしにくいときは、雑談でほぐれてから本題に入った方がいいことも多い。ただ、ある海外のメーカーと交渉したとき、そのトップと趣味について雑談したら、相手は世界の最高峰を全部制覇した本物のアルピニストで、驚きのあまり話が続かなかったなんてこともありましたが。

 雑談のネタは、ビジネスの看板に助けられることも多くあります。「ホンダに乗っています」と言われたり、自分が携わっている産業と社会的な問題をつなげて会話のきっかけを作ったり。

 こんな話をしてもつまらないかな、と自信をなくさず、何でも人と分かち合おうという気持ちが大事。TPOで話題の切り口はいろいろなので、知的好奇心も大切です。好きなことを深めれば、相手が食いついてくるかもしれません。

 英語は「ああ言えばこう返す」という応酬のパターンや言葉のニュアンスを知ると、より相手に伝わります。難しい単語を使わずに相手にインパクトを与えることもできる。アメリカの法廷ドラマは勉強になるのでよく見ています。

 長いつきあいで互いのキャラクターをわかってくると、軽口もたたけるようになる。先日もある国の大使と、共通の趣味であるバイクの話で盛りあがりました。ともに奥さんの反対に遭って思うようにならない。恐妻家(henpeckedhusband)ネタは世界どこでも通じるようです(笑)。

AERA  2015年11月9日号より抜粋