MDはイランではなく、実際にはロシアの無力化を狙ったものだ、という従来のロシアの主張が裏付けられたと、プーチン氏は受け止めている。今後最新のMDに対抗できるような新型の核ミサイルの配備を急ぐことが予想される。それが、国際社会でのロシアの発言力の強化につながる、とプーチン氏は考えているのだろう。

 次にプーチン氏は経済問題に話を広げ、「今日のグローバル経済の現実は、貿易と制裁による戦争である」と断言した。

 ウクライナ問題で米国からロシアが受けている制裁だけではない。トヨタ自動車が09~10年にかけて起こした大規模リコール(回収・無償修理)問題で、米司法省に12億ドル(約1210億円)の支払いで合意した例や、フランスのBNPパリバやドイツのコメルツ銀行といった銀行大手が、米国の制裁違反などを理由に巨額の罰金を科せられた例も挙げた。

 日本や欧州が米国の恣意的な政策の犠牲になっているという構図を強調することで、米国と日本・欧州の間にくさびを打ち込もうという意図が感じられる。

AERA  2015年11月9日号より抜粋