一方の同友会は「通年採用」が望ましいという立場で、具体的な議論を進めているという。
「政治判断」による後ろ倒しから1年で噴き出した見直し論。就活の時期を巡っては、半世紀にわたる紆余曲折が続いてきたが、大企業と中小企業、上場企業と未上場企業だけではなく、ベンチャー企業や外資系企業なども一定の存在感を持つようになった昨今、一つの基準で各社の採用スケジュールを縛ることはもう不可能に近い。
前出の下村氏も言う。
「もう、経団連だけが就職活動時期決定のリーダーシップをとるのは難しい時代でしょう。少なくとも、経済3団体が一緒になって、外資系や中小企業とも連携しなければなりません」
大学側はといえば、11月に就問懇が「大学側と経済界の意見交換を経ない見直しは避けてほしい」という趣旨の要請を経団連と日商に提出。だが、10月中旬までに有力154大学に行ったアンケートで、学長の6割が「選考解禁時期は4月が適当」と答えたという報道もあった。
●化かしあうなら最初から通年に
人事や採用に詳しいHR総研の松岡仁主任研究員は、
「どんな日程に設定しても問題が起こってしまうのであれば、日程自体をなくしてしまうのも一案だと思います」
と、「通年採用」を支持した。
都内の大手IT企業の人事担当者は、今年の採用で平然と嘘をつく学生が増えたと感じた。
「面接じゃないよといって面接をするなど、学生に大人が嘘をついている。化かしあうくらいなら、最初から通年採用にしたらよいのではないでしょうか」
通年採用にも問題点はある。文科省高等教育局学生・留学生課長の渡辺正実氏は指摘する。
「意識の高い学生以外は、活動を始めるきっかけを失うし、中小企業は今までよりも母集団形成に苦労するでしょう」
※AERA 2015年11月16日号