国交相が「埋め立て承認取り消し」の執行停止を決め、政府はついに本体工事にも着工。反対派の市民らとのもみ合いも激しさを増している/10月30日 (c)朝日新聞社
国交相が「埋め立て承認取り消し」の執行停止を決め、政府はついに本体工事にも着工。反対派の市民らとのもみ合いも激しさを増している/10月30日 (c)朝日新聞社

 執行停止に代執行。政府は沖縄に対して次々に強権を発動する。両者の対立の場は法廷に移るが、そもそも「公正な争い」なのか。

 沖縄県名護市辺野古に新基地を建設しようとする政府と、反対する県の対立は、二つの法的な争いが同時に進む異例の事態になっている。

 発端は10月13日、翁長雄志(おながたけし)県知事が起こしたアクションだった。

 政府は新基地の用地を確保するために、辺野古沿岸部の海約160ヘクタールの埋め立てを計画。防衛省は2013年3月、公有水面埋立法に基づいて県知事の承認を申請し、同年12月に当時の仲井真弘多(ひろかず)知事が承認した。翁長知事は今回、「適切な審査を行った形跡が見られない」などとして、前知事による承認には「法的瑕疵(かし)がある」と、承認を取り消したのだ。

 防衛省は翌日、同法を所管する国土交通相に、行政不服審査法に基づく審査を請求。裁決が出るまでには通常、数カ月かかるため、承認取り消しの効力をいったん止める「執行停止」も同時に申し立てた。10月27日に国交相が承認取り消しの執行停止を決めたことを受け、29日には埋め立て本体工事が始まった。

 実はこの審査請求、政府には申し立てる資格がないとの指摘がある。行政不服審査法は本来、国民の権利救済を想定しているとの立場からだ。行政法の研究者有志95人は先月、「(沖縄防衛局の)審査請求は不適法」との声明を出した。

「国の行政機関である沖縄防衛局が“私人”になりすまして、同じ国の行政機関である国交相が恣意的に執行停止・裁決を行おうというもの」で「法治国家にもとる」と厳しく非難している。

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