グローバル教育の探究型カリキュラムには教科書がない。植物を育て、観察して気づいたことを英語で発表する(写真:東京インターナショナルスクール提供)
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グローバル教育の探究型カリキュラムには教科書がない。植物を育て、観察して気づいたことを英語で発表する(写真:東京インターナショナルスクール提供)
東京インターナショナルスクール アフタースクールのShow&Tellの時間。自分の好きなものについて英語でプレゼンする(写真:東京インターナショナルスクール提供)
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東京インターナショナルスクール アフタースクールのShow&Tellの時間。自分の好きなものについて英語でプレゼンする(写真:東京インターナショナルスクール提供)

 英語の早期教育がブームだが、つまずくのが中学受験の「小4の壁」。グローバル教育と受験の両立には時間もお金もかかる。学習方法も違う。

 グローバル教育と受験を両立できない大きな理由は、時間が足りないからだ。受験塾に通い始めると、多くの子が習い事をやめたり減らしたりする。どうにか工夫して両立を目指すのか、それともグローバルか受験のどちらかに振り切るのか。二兎を追う方法はないのだろうか。

 まずは、英語を受験の武器にする作戦。2011年度から小学5、6年で英語が必修化されたことに伴い、帰国子女枠ではない一般入試にも英語を導入する私立中学が増えている。15年度、英語を入試科目に取り入れた中学は首都圏だけでも30校を超え、16年度に新設するところも少なくない。

 帝京中学(東京都板橋区)では00年度から、一般入試で国語、算数、英語のうち2科目を選べるようにしている。英語の試験に面接はなく筆記のみで、英検4級レベルの単語の書き取りや文法など、記憶力や読解力を重視する。「受験英語」にこだわる理由を、英語科の田中敬一主任はこう説明する。

「ここ数年は中学1年生で、すでにほとんどの生徒がアルファベットを書ける。歌って踊るような英語は誰もができる。頭ひとつ抜けて授業でリーダーシップを取れる子を選抜するため、文法の知識を重視しています」

 英語で受験するなら、受験のための英語をガチでやらなければならないというわけだ。英検2級レベルを求める学校や面接でコミュニケーション力を見る学校もある。いずれにしても週1回の英会話スクール程度では太刀打ちできそうにない。

 では、小学4年生からは受験に力を入れ、それ以外の時期にグローバルの素地を身につける作戦はどうだろうか。

アメリカ留学経験がある母親(39)は、長男(9)が幼稚園のときに夫の仕事を調整し、家族でタイのバンコクに移住した。さまざまな国籍の子どもと学べるよう、イギリス系インターナショナルスクールに通わせている。

「グローバル教育をするなら小学校低学年のうちだと思っていました。高学年だと英語を話せるようにはなっても、積極性や自己アピール力は育ちにくい。ただ、日本人である以上、中学と高校は日本の教育を受けさせるつもりです」

 帰国子女枠での中学受験を視野に、日本語の力を補うためバンコクにある日本の学習塾に通わせている。タイミングさえ合えばスムーズにグローバルと受験を両立できそうだが、日本語力不足や情報不足というハンディもあるという。

AERA 2015年11月9日号より抜粋