まず、米国の子育て施策は薄弱です。日本では産休・育休の期間中、国や健康保険組合から手当や給付金が支払われますが、米国にはそれがなく、女性たちは出産から2、3カ月で仕事に復帰せざるを得ない。しかも、中流家庭の人が子どもを預けてもいいと思えるような「いい保育園」は月額15万~20万円。これは日本の認可保育園に比べて5倍近い保育料です。そのため、夫婦は節約のために保育時間を短縮しようとする。例えば、働く時間や場所、曜日などの労働条件と給与をそれぞれが会社と交渉し、家族にとってより良い働き方を選ぶのです。

 それに比べ、日本の子育ては制度と女性で回るように設計されていると言えます。子どものために仕事を融通してほしいと妻が頼んでも、夫たちは「ムリ」と一蹴。妻たちは会社と行政に子育て支援を求めても、隣にいる夫には求めないという現状を生むのです。

 男性にも言い分はあります。女性の産休や育休、時短勤務を周囲は「まあ、そうだよね」という感覚で受け止めても、男性は許されない。プライベートも含めて、すべての時間を差し出す働き方しか用意されていないのです。しかし、今では日本型の終身雇用や年功序列の給与体制は崩れつつある。部下に出世で先を越されたり、部門ごと他社に買収されたりすると、男性たちの意識はがらりと変わるでしょう。

AERA  2015年10月19日号より抜粋