帰宅後にそれとなく誘っても、夫は無言で布団に入り、妻に背を向けて寝たふりをする。

「生活自体に不満はない。ぜいたくを言ってはいけないのかもしれないですけど……」

 もはや、夫だけが働いて妻は家で家事と子育てをする、という時代に戻ることはできない。セックスレスは、避けられないことなのか。

 数多くの男女からセックスレスの相談を受けてきた「恋人・夫婦仲相談所」所長の二松まゆみ氏は言う。

「夫が『妻だけED』になるのを防ぐには、『夫婦は平等』という感覚を、あえて夫には持たせないことでしょう。妻はそう思っていてもいいですが、表に出さずに夫をコントロールして家事や育児をさせること。そうすることで、自分の負担や不満も軽減しますから」

 妻たるもの、したたかであるべし、ということだ。

 亀山氏は、「不倫を勧めるわけではないですが」と断ったうえで、結婚についての「固定観念」の打破を提案する。「価値観の多様化が進む中、結婚という制度についての考え方は変化していません。性の対象は必ず妻か夫でなければいけないと考えることが、男女を苦しめているという見方もできると思います」

 生活や人生を共に乗り越えるパートナーと性愛の対象となるパートナー。二つの役割を1人の相手が果たすものが結婚だという前提を、見直す時期にきているのだろうか。

AERA 2015年10月19日号より抜粋