ランドセルは外国人にも人気。伊勢丹新宿店で取材中、台湾人の父娘が来店。「台湾でも人気」「赤いのがかわいい」と話した(撮影/今村拓馬)
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ランドセルは外国人にも人気。伊勢丹新宿店で取材中、台湾人の父娘が来店。「台湾でも人気」「赤いのがかわいい」と話した(撮影/今村拓馬)

 ランドセルを巡る状況が大きく変わっている。赤と黒以外の色が増えていることにはお気づきの方も多いだろう。それだけではない。購入時期や代金を支払う人も変わり、デザインや機能は進化している。

 120個ほどもランドセルが並ぶ、8月下旬の東京・伊勢丹新宿店。あちこちに貼られた「売り切れ」のPOPが、シーズンピークを越えたことを物語る。それでも、平日の昼間にもかかわらず、売り場には数十人がいて、ランドセルを次々に「試着」していた。

 ランドセル商戦のピークが「夏」と言われるようになったのは、いつごろからだろう。10年ほど前は、秋も深まった10 月末からの販売が普通だった。それがいまは、GW明けから店頭に並べるところもある。

 三越伊勢丹の婦人・子供統括部・氏家(うじけ)徳子さんはこう話す。

「今年は、7月1日にランドセル売り場を立ち上げました。新宿店の販売初日は開店直後から大混雑で、静岡や山梨から始発のバスで来られたお客さまもいらっしゃいました」

 ピークの早期化を促したのは、消費行動の変化だ。少子化に伴って、子どもの小学校入学は家族の一大イベントになった。ランドセルは、両親のみならず父方か母方、いずれかの祖父母とともに買いに行き、祖父母が買ってあげるものとして定着。結果、家族の集まる「夏」が主戦場となった。売り場の混雑には、親子に加えて祖父母が共に来店するケースが多いことも影響している。

 高いものは15万円超、安いものは1万円台と価格帯の広いランドセルだが、素材でいうと、コードバン(馬の尻革)、牛革、クラリーノなどの人工皮革の3種類が主流。この順に価格が高く、重量も重い。そしてそれぞれに、多種多様な色やデザインが存在している。

 以前のランドセルは単なる道具で、「買えればいい」が消費者の基本姿勢。「男の子は黒」「女の子は赤」しか選択肢がなかったが、キッズファッション誌「sesame」編集部の赤石博子さんはこう話す。

「最近のママ世代は、人と同じものを好まず、さりげないこだわりを大事にする。それが子どものランドセル選びにも影響しているのでは」

AERA  2015年10月19日号より抜粋