その大半が無料会員のものだった。ニックネーム、生年月日、大まかな住所が類推できる郵便番号、メールアドレス、身体の特徴、性的な好みなどが登録されていた。

 氏名、住所、電話番号など個人の特定につながるのは有料会員の情報で、151万2658人分あった。うち日本人は1万746人分。生年月日から推計すると50代以上が9割を超える。

 有料会員は、異性にメッセージを送ったり、音声チャットで会話したりできるといったサービスにより料金は6320円、1万6千円、2万4千円と3段階に分かれる(今年9月時点)。

 驚いたのが、無料会員の男女比だ。男性が約86%、女性が約14%。この手のサイトの割には女性が多い印象がある。そこには、裏があった。

 データをさらに詳しく分析したところ、女性の99.7%は、登録のみで何もしていない「幽霊会員」だった。同じ都市に住む女性会員が十数人、一度に登録していたり、居住地がばらばらな会員を登録したパソコンのIPアドレス(ネット上の住所)が特定の1カ所に集中していたりした痕跡もあった。

 アシュレイには実在しない「サクラ」がかなりの数、含まれているのでは──。そこで今回、記者は前出の男性が覚えていた女性会員2人の流出データを調べた。

 すると、奇妙な共通点が見つかった。連絡先のメールアドレスのドメイン(組織)名がともにアシュレイが発行する「ashleymadison.com」だった。さらに、会員登録したパソコンのIPアドレスはともに、カナダの会社内の端末を表していた。

 同じような登録データを持つ女性会員は8万4359人分あった。これらの女性会員はカナダの会社が登録した「サクラ」の可能性がある。男性にそう伝えた。

「サクラに金をつぎ込んだ揚げ句、情報が漏れて毎日しんどい思いをしたのか……。救いようがない結果だ」

AERA 2015年10月26日号より抜粋