「波柴はめずらしい名字で覚えられやすい。仕事をするうえで名前を変えるのに抵抗を感じたので、事実婚を選んでいます」

 1度目の妊娠の際に、つわりなどがひどく、会社を辞めた。事実婚の夫の扶養に入れるか調べてみると、住民票には「未届けの妻」として登録されていたため、扶養家族として認められた。離婚の時は住所変更手続きを取ると、未届けの妻という表記も消えた。子どもは波柴さんの戸籍に入れていたため、離婚後も子どもと波柴さんは名字を変えることなく暮らせた。

「一人親家庭の申請に時間がかかったくらいで、相手に養育費も請求しませんでしたから、事実婚でも取り立てて困ったことはありませんでした」

 離婚後は保険会社に就職、AFPなどを取得し独立した。現在は社団法人の理事も務めているため、今回の結婚でも名字が変わることに不都合を感じた。

「入籍した場合、公的届けと仕事の通称使用とを使い分けるほうが面倒に感じました」

 旧姓の通称使用が随分と認められてはきているものの、国家資格や登記など戸籍名が必要なことは少なくない。手続きに手間がかかるという不便さもぬぐえない。

AERA  2015年10月19日号より抜粋