「知日」編集長蘇静さん(33)知日編集部は北京中心部のオフィスビルの一室。蘇さんは日本留学経験もなく日本語も話せないが、日本映画と村上春樹の小説を通じて日本に興味を持ったという(撮影/張朋)
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「知日」編集長
蘇静
さん(33)
知日編集部は北京中心部のオフィスビルの一室。蘇さんは日本留学経験もなく日本語も話せないが、日本映画と村上春樹の小説を通じて日本に興味を持ったという(撮影/張朋)

 日本文化を紹介する中国の雑誌「知日」。アエラはこの雑誌と一緒に笑いの特集号を作りました。一緒に笑えば何かが変わる!

 2011年、尖閣諸島問題が激しく日中対立を招いていた時期に、中国で一冊の雑誌が創刊された。「知日」。中国で日本の文化や習慣を紹介する専門誌だ。

 喫茶店、怪談、萌え、メカ、手帳、雑貨、武士道、推理小説、森ガール、鉄道、奈良美智……。日本人ですら限定されたファンやマニアしか興味を持たないような内容が、中国でたくさんの人に読まれることに驚かされる。

 毎号5万部は売り切る人気だ。いままでの一番人気は「」特集で、約10万部売れたという。「断捨離」を扱った号は社会的な話題となり、中国で断捨離という日本発のコンセプトが広がるきっかけにもなったと言われる。

 その知日とアエラは、コラボレーションして日中の“笑い”を考えた。戦後70年、政治や経済で両国は難しい問題を抱え、時に反日、反中運動も起きた。だが、そんな対立も笑いなら乗り越えられるのではないか──。そう考えて、アエラ編集部からコラボを持ちかけた。コラボに応じた理由を、創刊以来、編集長を務める蘇静(スーチン)さん(33)はこう語る。

「このような日本メディアとの協力は、知日は一度もやったことがなく、関心があったので、トライしてみることにしました。同じテーマを取材しても、日中両国の編集方針の違いも出るでしょうし、面白そうだなと」

 知日では、年内に「笑い」に関するアエラとの合作号を刊行する予定だ。アエラとの共同取材に加えて、独自のコンテンツも用意する。

 日中間の笑いにどんな差異があるのか。一般的には、中国の笑いはどちらかというと政治風刺やブラックジョークが目立ち、日本は庶民の日常生活の心温まる笑いが主流だとされる。

 蘇さんが語る日中の笑いの感覚に対する違いはこうだ。

「個人的には、中国の笑いは大雑把で、日本の笑いは細かいところを突いてくる、という気がします。でも、中国でもソーシャルメディアの普及もあって、笑いは多様化し、日本人の笑いと中国人の笑いがどんどん近づいている。日本のツイッター上の面白い話が、中国版ツイッター微博(ウェイボー)に転載されて話題になることもあります。日中のネットユーザーでは笑いに関する共鳴状況が生まれていますね」

AERA 2015年10月5日号より抜粋